Honolulu City Lights

 


music by Keola & Kapono Beamer “Honolulu City Lights”

音楽でも聴きながら。

 

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お聴きいただいている”Honolulu City Lights” をご存知の方はハワイ通、もしくは留学や駐在などロングステイの経験をお持ちではないだろうか。

ホノルルを去るせつなさを歌ったこの曲は1979年のリリースから今日まで、どれだけの人の心を潤してきたことだろう。

ホノルルの夜景といえば殆どの人が「タンタラスの丘」からの眺望を思い浮かべるはずだ。ハワイを代表するミリオンダラービューは日本からの観光客を魅了し、ロコボーイ&ガールに幾度となく恋の魔法をかけてきた。

が、私と仲間たちの好きなホノルルの夜景は、タンタラスから見る華やかなワイキキの輝きよりも友人リアンの部屋から見る、ミルキーウェイさながらに広がるマウンテンビューだった。

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本土の大学へ編入が決まったリアンが旅立つ日。彼女の恋人テディとルームメイトのサラ、私を含む友人10人は観光名所から行き着けのベーカリーまで彼女を1日振り回し、アラモアナでアイスティーを飲みながら「日が暮れてきた、そろそろタンタラスへ行こうか」と誘うと、どこにも行きたくない、最後はうちからマウンテンビューを見ていたいと言った。

タンタラスから見るような煌びやかな光はほかの町でも楽しめる、けれどあの、手の届きそうな天の川はうちでしか見ることができないからと。

アラワイ運河に程近い彼女のアパートメントからは山側の夜景がよく見えた。ラナイに出て、悲しくなるから思い出話などせずに時間ぎりぎりまでただ、みんなで眺めていた。

あとから行くと言ったテディが空港に着いたのは私たちより10分ほど経ってからで、左手には小さなカセットプレイヤーを持っていた。80年代ハワイでも徐々にカセットからCDへと移行していったが、学生の殆どがまだカセットを使っていた。
それにハワイにはカセットがよく似合った。

フライトの時間が迫り、湿った海風の行き来するコリドーでテディは”Play”ボタンを押した。静かにHonolulu City Lightsが流れ出す。リアンの目からはみるみる涙が溢れ、こぼれ落ちた。ひとりひとりと抱き合い、最後にテディがピカケのレイを彼女の首にかけると二人にしか聞こえない小さな声で会話し、キスをして、あとから行くよと大きく手を振ると彼女はゲートの奥へと消えていった。

彼女を乗せた深夜の飛行機が飛び立つのを見届けてワイキキに戻る途中、何度も何度も繰り返し吹き込んだHonolulu City Lightsに誰かが「しつこくて最後は笑えてくる」と言った。皆涙を拭きながら笑った。

ひとり黙って窓の外を眺めるテディのために、私たちは空が白んで山の灯りが消えるまで、島じゅうをドライブした。

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そうして朝は、残された者たちのためにまた訪れ、”Honolulu City Lights”は次に旅立つ誰かを待ち、眠りにつく。

ホノルルという町がある限りこの歌は愛され、いつの日も人の心に温かい涙を注ぎ続けていくのだろう。

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そう言えばつい数日前初めてカーペンターズの”Honolulu City Lights”を聴いた。カレン・カーペンターのスムースな歌声はこの歌のムードにぴったりだし、こちらを先に聴いた人には「これこそがHonolulu City Lights」と思うのかもしれない。が、ホノルルに暮らし、去った経験のある人にとってはやはり、Beamer Bros.のオリジナルでなければ「あの日」には戻れない。

音楽はどんなに遠い昔の思い出も一瞬にして鮮やかに蘇らせる不思議な力を持つ。今夜は、この曲が連れてきた懐かしい人たちと語り合おう、ワインじゃなくて、学生時代に戻ってパンチでも飲みながら。

all photos by Katie Campbell from F.G.S.W.

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