“Heartbreak Hotel” by Elvis Presley
旅先で、また暮らしの中でもふと目につく看板やシンボルがある。それは特別私に関わりのあるものでなくてもどこか気になり、好きになり、「あのサインを見ると心が晴れる」「この看板の下に立つとイヤなことを忘れられる」そんなふうにいつしか心のお守りになっていたりすることもある。
本当のことを言えば、特別エルヴィスが好きだというわけでもない。けれどアメリカにいる限りこの人の存在を100%スルーして生きるなどできないのだから、やはりKingと言われるだけの存在なのだ。
そして「特別好きでもない」とか言いながら彼の歌なら何曲でも歌えるし、メンフィスを訪れるたびやっぱりGracelandに立ち寄ってしまうし、エルヴィスの好物だったというバナナプディングだって作れちゃうのだから、調子の良いことに実はけっこう好きだったりするのかもしれない。
Elvisの名曲 “Heartbreak Hotel”は、こんな歌。
Well, since my baby left me / かわいいあの子が僕のもとを去ってから
I found a new place to dwell / 新しい住処を見つけたんだ
Well, it’s down at the end of Lonely Street / ロンリー・ストリートの突き当たり
At Heartbreak Hotel / ハートブレイク・ホテルさ
Where I’ll be, I’ll be so lonely baby / 寂しいよ、寂しくてたまらない
Well, I’m so lonely / すごく寂しいんだ
I’ll be so lonely, I could die / 寂しくて死にそうだよ
失恋した寂しさがきゅうっと胸から絞り出されるような詩であるが、メンフィスの町にこの名のホテルがあるというから探してみると、真っ青な夏空に美しく聳え立つ華やかな姿。
アメリカで私のもっとも好きなサインのひとつだ。
歌詞とは違い堂々とした面持ちで華やかで、エルヴィスの存在感によく似たこの看板からは恋に破れた寂しさもせつなさも伝わってはこないから、きっと恋人同士で泊まっても大丈夫であったろうが、現在は残念ながらClosed.
◆Heartbreak Hotelの代わりに”The Guest House at Graceland”がある。
all photos and Japanese lyrics by Katie Campbell / F.G.S.W.