過ぎゆく季節を惜しみながら、本日は流氷のお話。
2月21日。
2月が来ると毎日のように「流氷速報」を確認し、こちらのスケジュールと流氷の接岸がぴたりと合った日にはカメラを提げて車に乗り込む。
北海道の流氷は、オホーツク海のロシアに近い北岸で海水が凍りつき結合しながら南下してくるのであるが、いったん接岸してもその日の風の強さや向きによって陸から離れるため、一般人の観測は行き当たりばったりなところがある。
この日東へ向かうこと3時間、海岸線に出ると海が一面、凍っていた。厳密には流氷が密集して凍って見えたというものだが、きっと誰の目にも凍結した海。前日に接岸していたことを確認した上で当日のドライブを決めるも、一度ミスを経験していたためあまり期待せずに行こうと夫と話した。ところがありがたいまでの裏切り、これほど見事な流氷は初めてであった。
目の前の世界は蒼白く、水平線にだけ日が差して天と地を分けているように輝いていた。
視界を埋め尽くす氷の群れは、ロシアと日本を繋いでいるかのように思われた。ロシアからキタキツネが流氷に乗ってやってくるというし、こう凍っていては巡視船も動けまい。ここからぐんぐん歩いて行ったら国後島に着いちゃうんじゃないかしら、なあんてことを考えたりもした。
世界は不自然や不幸に満ちている。どれも元は人の心が動かし生み出すものだ。何と面倒なのだろうと思ったらひどく疲れたような気分になった。自然は感情など持たず私たちに島と島とを繋げて見せるのに。
つまらないことを考えながら時の止まったような、波音のない冬の海を凍てつく北風に耐えながらいつまでも眺めていた。
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さて3月も中旬、東京はあさってが桜の開花予想日になっている。北海道は明日も雪の予報だが、流氷はいつまで見られることだろう。