Moments 26: Linger
There must be something strangely sacred in salt.
It is in our tears and in the sea.– Kahlil Gibran
4月の海にはまだ冬が漂っている。
北へ向かうのを躊躇っているかのように留まる。
送り出そうか、引き留めようか。
心も波にまかせて寄せては引き、もじもじする。
雪の残る浜辺に立つと、潮風が時折遠い昔の思い出を連れてきて厄介だ。
何も考えずに眺めていたいのに、面倒なことをしてくれるな。近寄ってくれるな。
すると仕方なさそうに潮風は、耳元でギブランの言葉を囁いてみせる。
すべては塩のせい。清らかな潮風の神秘が心を揺さぶるだけだと。
そうか、思いを残したものたちとの決別は潮風にまかせるのがいい。
身勝手な私は都合のいい答えを得て
心を痛めず思い出たちを波に乗せたら4月の海に背を向ける。