There must be something strangely sacred in salt.
It is in our tears and in the sea.– Kahlil Gibran
4月の海にはまだ冬が漂っている。
北へ向かうのを躊躇っているかのように留まる。
送り出そうか、引き留めようか。
心も波にまかせて寄せては引き、もじもじする。
雪の残る浜辺に立つと、潮風が時折遠い昔の思い出を連れてきて厄介だ。
何も考えずに眺めていたいのに、面倒なことをしてくれるな。近寄ってくれるな。
すると仕方なさそうに潮風は、耳元でギブランの言葉を囁いてみせる。
すべては塩のせい。清らかな潮風の神秘が心を揺さぶるだけだと。
そうか、思いを残したものたちとの決別は潮風にまかせるのがいい。
身勝手な私は都合のいい答えを得て
心を痛めず思い出たちを波に乗せたら4月の海に背を向ける。