自宅のある旭川は北海道内でも夏の暑さが厳しいことで知られるが、今年の猛暑は残酷とも言え、これで道内のクーラー普及率が上がってしまうかと思うと涼やかな自然風が自慢の北海道にも温暖化の悪影響が広がることは必至、心配でならない。
「地球温暖化は作り話だ」また昨年厳しい寒波に見舞われた自国に対し「我が国にもほんの少し地球温暖化が必要だ」などと平然とツイートしてのけるアノ方の言葉をよりにもよってこんな時に思い出してはカッカカッカと勝手に暑さを助長する愚かな我が身が情けない。
ならば気分だけでも爽やかな夏をと出かけたドライブも異常気象に完敗、どう頑張ってもクーラーは必要であり、ゆえに車内は涼しいには涼しい、けれど強力な日光が肌にチリチリと射し込み「どこかでおいしいシーフードでも」とか言ってたくせにすっかり食欲も落ちてアイスバーばかりペロペロ舐めている始末であった。
積丹町から美しい積丹ブルーを眺めながら小樽・札幌方面へと向かう途中、巨大なこの岩に出会う。実際に名称を持つのかは分からないが、柔らかい鼻やあごのラインと穏やかな風貌から私は「積丹菩薩」と呼んでおり、彼女の前を通り過ぎる時には必ず声を掛けている。
「こんにちは、よろしくお願いいたします」
彼女は積丹の美しい海を望み、背後にちっぽけな私の声を感じながら何を思っているのだろう。平和な世、美しい地球の存続を念じてくれているようには見えまいか。
だからついお願いしてしまう「よろしくお願いいたします、明日も、10年後も100年後もこの海が青く、ここに暮らす人たちが夏を楽しんでいられますよう守ってあげてください」。私は本当に微力だから、つい。
「ならばまずはあなたも日々の暮らしに気を配りなさい」と積丹菩薩に窘められそうで気が引けるが、菩薩を通り過ぎてからも、私の左に広がる青い海と北海道の短い夏がいつまでも変わらぬよう、クーラーを切って窓を開け、手のひらいっぱいに暖かな海風を受けて祈った。
◆後日談: 私の名付けた「積丹菩薩」実は「弁天岩」と呼ばれているのだそう。そうか、弁天様か。でもなあ、菩薩の方が、イメージに合うんじゃないかなあ。